Math Flow Chart・実力別の数学コース

シリコンバレーでは子供のSTEM教育(Science, Technology, Engineering, Mathmatics、いわゆる理系教育)に親達の物凄い情熱が注がれています。

特に自分の子供の教育となるとそれはそれは熱心な、

気迫と狂気に満ちた親たちが沢山です。良い意味で。

理系分野に関してはお父さん比率が高いです。

子供を少しでも高いレベルに押し上げたい親と

それに反対する学校とのせめぎ合いがあり、

数学の履修コースに関するルールは毎年変更されています。

 

数学は個人差が大きい科目のひとつなので、全体授業ではなく、

小さくグループ分けしてレベル別に授業を受けさせて行くのが基本。

 

スタートは早く、キンダーから数学の計算が始まり、すぐに二桁の計算へ進みます。

でも、その後、同じような内容を繰り返し何年も教え、

小学校のうちは大して難しい事をさせずに終わります。

担任の先生がクラスをひとまとめにして教え、

進んでいる子には違うプリントを渡したり、多く課題を与えて対応しています。

遅れている子は専門の先生と一緒に個別授業をする事があります。

個人的主観では小学校三年生くらいから中学までは

日本の算数の方がレベルが高いです。

日本の子は九九を駆使するので実力に差がつくのだと思います。

 

パロアルトでは中学の最終学年からようやく数学のコースが実力別に分かれてきます。

近隣の都市では小学校からガンガンとコース分けをしているのに、

パロアルトは中学から。それも2つだけ。

うちの子の学校は7〜8割くらいの子が上のコースに振り分けられるようです。

 

それではとっても理系な人たちはどうするのかと言うと、

学年を飛ばして上の学年の授業を取らせます。

昔は希望者がガンガンと数学を飛ばして、

2学年くらい上のクラスを取る事が容易にできました。

中学生なのに数学だけ高校に取りに行くとか、

高校生が朝だけカレッジに行くとかしてたのです。

小学校三年生あたりで飛ばしておくとあとが楽だとか親達は話をしていたものです。

 

最近では学校が数学を飛ばす事はおおっぴらにしなくなりましたが、

制度としては残っています。

中学の6thグレードの終わりに先生の指定した子、

あるいは親がものすごく学校にプッシュして希望した子のみに

ひっそりとSkip Math Testというテストを行います。

そのテストは7thグレードで習うの数学の内容で、一定以上の点数を取れば合格。

7thを飛ばして翌年は8thグレードのクラスが受けられます。

うちはテストの案内をもらいましたが、学校以外で一切勉強をさせておらず、

いい点数が取れる訳もないので受けませんでした。

案内をもらったのはクラスで3名(5%くらい)の子供達だったそうです。

 

上の子の時は、先生が親達全員に制度の説明をし、

希望者は誰でも受けられたのですが、ここ数年で明らかに厳しくなりました。

このテストの合格率も学校側の判断なので年々低くなっています。

 

それでも数学に命を賭けた親達は、なんだかんだと直談判をし、

あの手この手でそれぞれの時期に数学を飛ばす努力をしています。

ちなみに中国人ネットワークでは、

スキップテストには落ちたけど、まだ上のクラスを取らせたいという趣旨の

直談判用のサンプルメールが出回っていて、それを使ってごねるそうです。

担任がダメなら数学の先生、あるいは副校長、校長先生、

さらにはディストリクトオフィスに直談判してスキップさせようとする親もいます。

 

高校になるとコースが更に分かれ

上のコースは4年目にカレッジレベルのAPコースに進むようにできています。

これがなかなか高いレベルで、教えている先生でもわかっていない人が出る始末。

実際に高校では上のレーンから下に下げる生徒が沢山出て、

下のクラスに入りきれなくなる現象も起きます。

小さい時に無理して子供に上のコースを取らせると後が大変。

 

参考までにフローチャートと呼ばれるコースリストを載せます。

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これが来年2018−19年のコース。

 

ちょっとわかりづらいですが、下の方に四角で囲まれているのがコース図。

上が簡単なコース、下が難しいコースです。

一年にひとつずつ右の四角に進みますので、

簡単なレーンを選んだ人は最後まで終わらないで卒業する事になります。

毎年少しずつ変更があり、数年前まで5つのレベル分けだったのが、今年は4つ、

来年から3つに減りました。

 

今年から一番上のコースを推奨しなくなったようで、

Typical Pathway(みんながよく取るコース)という表記をつけて下に誘導しています。

 

少し前から先生が来年はどのレベルのコースに行くかを推薦するようになり、

そこよりも下げる事は簡単に許可されますが、上げるのは難しくなりました。

学年を飛ばして上のコースを取った子は、

常にいい成績を取っていないと資格を失い下のクラスに落とされます。

数学だけではなく、理科も同じです。

  

アメリカではサマーキャンプで勉強をしてくると、

その分をクレジットとして取り扱ってくれる学校が多い中、

パロアルトは近所のカレッジ以外のコースは認めてくれません。

逆に学校の授業についていけない子達に関しては

Bridgeと呼ばれる補習が夏休みに用意されます。

 

また学年の低いうちから難易度の高いAPコースを取る事は反対され、

登録すると、学校が勝手に取り消してしまうという事態が発生していました。

能力のある子には可能な事なはずです。

親が強制して無理やり子供に取らせるケースを危惧してか、

APコースは一年に2つまでというルールも作られました。

ただし、来年は校長先生が変わるので、2つ以上でも見逃されているようで・・・。

終始一貫されなかったので、

去年までのルール中に在学していた優秀な生徒には不幸な事になってしまいました。

 

大学受験にどれだけ難関なクラスで勉強してきたかというのは大切な要素で、

APレベルをいくつ終わらせるかがひとつの目安となるのです。

 

学校が上のレベルを取ろうとすると反対する背景には

プレッシャーをかけすぎる親から子供を守ろうという姿勢があります。

 

無理して上のコースを取り、いい成績が出ないと、

こちらの親は先生に直接連絡を取り面談を申し込みます。

特に海外から仕事で来ている親たちは

自国でトップクラスの成績を取って来た自負があるので、

自分の子供も成績優秀でないと満足がいきません。

どこからテスト問題を出すのか聞き出そうとする親や教え方が悪いと直訴する親、

授業を観覧する親、それぞれに対応する先生も大変です。

成績が発表になる直前から休みを取り、

一切連絡が取れなくなる先生も出るくらいです。

 

数学の能力が高いと思われる子には親が何もしなくても

先生が家に電話をかけてスキップテストを受けないかと提案したり、

我が家のパターンのように招待状を送ったりして対応しているはずなのですが。

 

学校側と親たちのせめぎ合いはまだまだ続くので

下の子が高校に上がるまでにはまたさらに履修ルールが変わるんだろうな。。。